為替ヘッジ有の投資信託、注意必要
前にも、円高対策として、為替ヘッジ有の投資信託について書きました。
2023年中には、円高への転換があると考えて、為替ヘッジ有の信託をかなり保有していましたが、円高への転換はまだ来ませんし、これらの投資信託のパフォーマンスはあまり良くありません。
為替ヘッジ有の投資信託は、円安が続きますと、ヘッジコストがかかるという大きなデメリットがあります。
このデメリットを具体例でまとめてみました。
為替ヘッジ有の意味は
為替が円高に動く際の、為替差損をさけたい時に、為替ヘッジ有の投資信託を選びます。
例えば、米国株の日本での投資信託を持っていたと考えましょう。
1ドル=150円の時に、10ドル分の米国株投資信託を買ったとしましょう。日本円にすると、1500円です。ところが、1ドル=100円の円高に移行したとしましょう。この時、米国株自体は、10ドルのままで同じ価値だとしても、日本円にすると、100円×10ドル=1000円の価値しかありません。
500円の減ってしまいました。これが為替差損です。もし為替ヘッジ有の投資信託であれば、この為替差損が起こりません。
それなら安全のために、為替ヘッジ有の投資信託にすれば良いという単純な話でもありません。円高が起ころうと起こるまいと、常にヘッジコストがかかるのです。このコストが結構大きいのです。
為替ヘッジコストどのくらいかかるか
現在足元では、およそ、5~6%/年くらいかかっているようです。
そもそも信託報酬(投資信託の管理費)が1%以下だけど?、と思うかもしれませんが、ヘッジコストは信託報酬とは別です。信託報酬の他にかかる費用です。
ヘッジコストは、金利差によって変化するので、管理費(信託報酬込み)のように一定ではないのです。米国で考えれば、ヘッジコストは次のような感じのようです。
日米短期金利差(米ドル短期金利ー円の短期金利)+ ベーシススワップ(米ドル調達上乗せ金利)
ベーシススワップはドルの需要で高くなる 0.2~0.5%くらいのイメージ
短期金利って何を見るの?とか、ベーシススワップでどこでわかるの?とか、素人には難しいのですが、私のような個人投資家は、正確な値が知りたいわけではありません。
私は、日米政策金利差(政策金利は情報を得やすい)で、ベーシススワップは0.3%として、ざっとヘッジコストのイメージをつかみます。足元ですと、米国政策金利が5.5%、日本の政策金利は0%として、ベーシススワップが0.3%とすれば、ヘッジコストは、およそ5.8%くらいとイメージできます。
投資信託で投資している資産の価値が変わらないとしても、年間5.8%が費用として無くなっていくと考えると、とても大きな額です。
この他にも、投資信託では信託報酬と呼ばれる管理費用がかかります。これは、1%以下で、安い高いが議論される世界ですので、これにくらべても、足元の為替ヘッジコストは安くはありません。
ヘッジ有と無、パフォーマンス比較
為替ヘッジ有の投資信託の費用は大きいので、長期保有には適さないと考えます。
いくつかの投資信託で為替ヘッジ有と無しの、6ヶ月、1年、3年のリターン(%)を調べてみました。(2024年2月19日現在として調べました)。
外国株式、外国債券、ゴールドの投資信託ですが、いずれも私がヘッジ有で保有している投資信託です。
🔵たわらノーロード先進国株式
<為替ヘッジあり>
6ヶ月で+10.9%、1年で+13.4%、3年で+17.5%
<為替ヘッジなし>
6ヶ月で+17.7%、1年で+34.2%、3年で+78.0%
🔵三菱UFJ/マッコーリーグローバルインフラ債券ファンド(配当は再投資)
<為替ヘッジあり>
6ヶ月で+2.8%、1年で-1.8%、3年で-22.0%
<為替ヘッジなし>
6ヶ月で+9.1%、1年で+16.1%、3年で+21.0%
🔵SMTゴールドインデックス・オープン
<為替ヘッジあり>
6ヶ月で+2.5%、1年で+1.6%、3年で-1.4%
<為替ヘッジなし>
6ヶ月で+9.2%、1年で+21.3%、3年で+57.4%
いづれも、為替ヘッジ有は、ヘッジ無に比べてリターン率が悪いです。その差は、3年が一番大きくなっています。
この結果は事実でありますが、大事なことは、常に為替ヘッジ有のパフォーマンスが悪いという事ではありません。その時期に円高が進んだのか、円安が進んだのか、為替は変化しなかったのか、為替の状況によってパフォーマンスは大きく違ってきます。
上記の3年間で、為替ヘッジ有のパフォーマンスが悪かったのは、この期間で円安が進んでいたからです。もし、この期間で円高が進んでいたら、パフォーマンスの結果は逆になっていたと思います。
なぜ為替ヘッジ有を保有していたか
上記で比較した投資信託は私が為替ヘッジ有で保有している物です。これらは、大半が2021~2022年に購入した物で、結果的には為替ヘッジ有にして、今のところでは失敗しています。
なぜ、為替ヘッジ有にしたかは、2023年のうちに、日米金利差が縮小して大きく円高傾向へシフトしていくと考えていたからです。しかし、いまだに円安が続いています。
上記の投資信託の一部は、為替ヘッジ無に切り替えましたが、まだ大半は保有中です。私の考えとして、今年中には円高へ動くと判断し、例えばあと1年分のヘッジコスト5%をはらっても、5%なら、150円の5%で、142.5円。つまり140円以下への円高が進むなら、ヘッジコスト以上のメリットがあるという計算です。ちょっと、失敗して意地になってるところもあるかもしれません(投資家としては駄目なのですが・・・)。
為替ヘッジ有の投資信託まとめ
私なりに、為替ヘッジ有の投資信託の考え方をまとめてみます。
大事な点は、
①為替ヘッジ有は、常にヘッジコストがかかる。
②為替ヘッジ有は、円高の進行も、円安の進行もなかった事にするので、為替差損も回避できるが、為替差益もなくなってしまう。
よって、
●円高進行時 メリット大 ヘッジコストはかかるが為替差損を回避できる。
●円安進行時 デメリット大 ヘッジコストがかかり、さらに円安の為替差益もなくなってしまう。円安進行時は金利差も拡大しているのでヘッジコストも高くなっている。
●為替一定 デメリット中 コストだけかかる。円安で一定の場合は、金利差大でヘッジコストは大きい。ただし、次の円高へそなえる場合は、円安のコスト大で仕込むことになる。
結論としては、円高への変換が1年くらいで起こると予測するのであれば、為替ヘッジ有の投資信託を活用するメリットはあると思う。ただし、長期保有や積立には向かないと考えます。
この投稿は個人の意見や考えであり、投資成果を保証するものではありません。投資は自己責任になります。